世界のトマト加工生産はなぜ減速したのか?
2026年初頭、世界加工トマト協議会(WPTC)のデータは、厳しい現実を明らかにした。世界の加工トマト生産量は2025年には約4029万トンにまで激減し、2024年の4580万トンから11.5~12%減少した。この大幅な減少は、世界中で生産されるケチャップ原料10トンにつき1トン以上が失われることを意味し、業界に衝撃を与えた。
生産を削減するのは誰か?生産を維持するのは誰か?
米国:「世界のトマト生産地」における自主的な生産縮小
世界最大の加工トマト生産国である米国では、2025年に「世界のトマトボウル」と呼ばれるカリフォルニア州セントラルバレーの生産量が劇的に減少した。契約栽培面積は20万5000エーカーに縮小し、1972年以来の最低水準となった一方、総生産量は約1030万トンに減少し、2006年以来の最低水準となった。注目すべきは、これは収穫量の減少によるものではなく(1エーカー当たりの生産量は実際には10%増加して55トン/エーカー)、意図的な栽培面積の削減によるものである。在庫水準の高さと価格の低迷により、加工業者は農家との契約を大幅に削減し、生産者の拡大意欲を削いだ。
欧州連合:二つの極端な物語
世界第2位のトマト生産国であるEUは、まちまちの結果となった。イタリアは、トマトピューレや皮むきトマトなど、欧米のスーパーマーケットで高値で取引される高級トマト製品群を強みとし、6%増と好調な伸びを示した。一方、スペインは生産量が22%も激減するという壊滅的な打撃を受けた。春先の雨で植え付けが遅れ、その後夏の猛暑で着果が阻害されたため、農家は収量と品質の両方が急落し、なすすべがなかった。
中国:崩壊ではなく、調整局面
中国の状況は、微妙な解釈を必要とする。WPTCのデータによると、中国の加工トマト生産量は2024年の1,045万トンから約490万トンへと急落し、53%の減少となり、スペインの減少率を上回った。しかし、この「崩壊」は、通常の市場需要をはるかに上回った2024年の記録的な高生産量からの調整が主なものである。2025年の縮小は、長期的な減少ではなく、過剰在庫を消化し市場バランスを回復するための積極的な業界調整を反映している。WPTCは、中国の生産量が2026年には600万~700万トンに回復し、新疆ウイグル自治区の作付面積は2025年の最低水準から160%増加すると予測している。
中国はなぜ逆境に逆らって拡大できるのか?
コスト管理:競争優位性としての機械化
中国の主要な加工トマト生産地である新疆ウイグル自治区は、育種から販売まで完全な産業チェーンを誇り、播種と収穫の99%以上が機械化されている。大型収穫機が毎日数十人の人手を代替することで、労働集約型の地域に比べて生産コストを大幅に削減している。
テクノロジー主導型:産業チェーン全体の統合
中国企業は、種まきから植え付け、加工、販売に至るまで、バリューチェーン全体を支配している。例えば、国農有限公司(Guannong Co., Ltd.)は、20万トン規模のトマト製品プロジェクトが2024年末にフル稼働に達したが、これは世界的な供給逼迫と時期を同じくしており、輸出受注が30%以上増加した。こうした生産能力と需要の一致は、幸運ではなく、業界の強固なインフラに起因する。
市場の多様化:単一市場への依存度を低減する
中国は、トマトペースト輸出の70~80%を欧米市場に依存していた状態から、ロシア、中央アジア、中東、アフリカなどを含む多様な輸出先へとシフトした。この「卵を複数の籠に分ける」戦略は、地域市場の変動から業界を守る効果がある。
世界的な生産削減は中国企業にとって何を意味するのか?
短期的なチャンス
世界的な在庫減少と価格回復に伴い、安定した供給能力を持つ中国企業が海外のバイヤーを引き付けている。業界アナリストは、加工トマト市場は今後3~4年間上昇傾向が続くと予測しており、品質と生産能力に優れた企業にとっては収益性の向上が見込まれる。
長期的な課題:量から質へ
しかし、これは「タダ飯」ではない。貿易摩擦や気候変動の不確実性が高まる中、国際的なバイヤーはサプライチェーンの安定性と予測可能性をますます重視するようになっている。中国企業は、低価格生産者に追い抜かれたり、高級ブランドに競争で負けたりしないよう、量産競争から脱却し、品質、技術、ブランド構築に注力する必要がある。
未来:これから待ち受ける機会と課題
世界のトマト加工業界は、抜本的な構造改革の真っ只中にある。中国の短期的な生産回復は目先の利益をもたらすものの、長期的な展望としては、製品品質の向上、技術革新の促進、そしてブランド競争力の強化が不可欠だ。世界のトマト加工業界の覇権は中国に移りつつあるが、その成否は、業界が「世界の工場」から「価値創造におけるグローバルリーダー」へと変貌を遂げられるかどうかにかかっている。
投稿日時:2026年5月20日




